なぜうつ病が良くならない?症状が改善しないときに疑ってみるべきことを精神科専門医が丸わかり解説
米国ではうつ病の12ヶ月有病率はおよそ7%とされ、18〜29歳の有病率は60代以上に比べ3倍といわれています。日本でも小中高生の昨年の自殺者数が統計開始以来最多となったことが先日ニュースとなり話題を呼びました。
若い世代にも大きな影響をもたらす精神疾患。正しい知識を得て対策をしていかねば、国の将来や社会全体に非常にも大きな悪影響をもたらすことが予想されますが、まだまだメンタルヘルスに対する知識は十分でなく偏見も根強く存在します。
精神疾患やその治療などについては誰にも相談できず、一人で悩んでいる人が多いためブラックボックスとなりがちで正しい治療や診断に辿り着けてない人も多くいます。
今回はうつ病がなかなか良くならないときに、疑ってみるべきものの話です。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。寒くなってきて腰が痛い中ヒーヒー言いながら必死に書いています。是非是非登録して読んでみてください。
うつ病と聞くとなかなか良くならないイメージがある方も多いかもしれませんが、実は米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル:DSM5-TRでは
抑うつエピソードからの回復はうつ病をもつ40%の人が発症後3ヶ月以内にはじまり,80%が1年以内に回復し始める.
とされています。実際の臨床でも重症な内因性うつ病に関して、きっちりした薬物療法や電気けいれん療法などの治療が適切に行われた結果、症状がはっきりと改善したことを実感できることは少なくありません。
ただ昨今ではうつ病という疾患概念自体の拡大解釈が起こっており、それにより「病気」として「治療」されてもなかなか改善が得られないケースも出てきています。
その辺りの問題点の話は過去記事で書いていますので興味がある人は読んでみてください↓↓↓
ただ、それを踏まえても「長年治療を受けているのに良くならない」という訴えで悩んでいるうつ病の患者さんは実際にもう少し多い印象があります。
うつ病が改善しないときに精神科医がすべきこと
うつ病が改善しないときに我々精神科医がすべきことは疑うことです。
意外でしょうか?
基本的に我々医師は患者さんの述べる症状をもとに診断をし、治療をしていきます。もちろん言葉だけでなく、思考の速度、内容、非言語的なもの、家族や近しい人からの情報なども非常に重要な所見ですが、それでも患者さん本人の訴えはやはり一番大きな情報源となります。
そして多くの場合、我々はその患者さんの訴えをむやみやたらと疑うことはしません。
しかし、「うつ病」と診断し、一定期間適切な治療をしたのにも関わらず改善が見られない際にはさまざまなものを疑う必要が出てきます。