スマホ認知症って一体何?精神科専門医が解説
先週から突如として目にするようになり、Xのトレンド入りも果たした「スマホ認知症」という言葉。
発端はある病院で「スマホ認知症外来」が始まったというニュース。
高齢化が進み、認知症やその治療に興味を持つ人が増える中、スマホとは切っても切れない生活をしている現代人にとっては決して他人事と聞き流せない言葉だったのでしょう。
X上にも「チェックリストでチェックしたらほとんど当てはまった」なんて心配の声が多く上がっていました。
そこで「スマホ認知症」とは一体どんなものなのか、ニュースなどの情報に踊らされない考え方について認知症疾患医療センターの副院長を務める医師が解説していきます。
スマホ認知症についてもっともらしく取り上げたメディアはこの記事を読んで反省してください。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。是非是非登録して読んでみてください。なお、今回の記事は本来、来週配信分です。時世を鑑み前倒して配信することにしましたので来週は配信がお休みになります。
スマホ認知症って一体?
ここ数日突如としてメディアを騒がせるようになった「スマホ認知症」
様々な番組で取り上げられネットニュースにもチェックリストが多く上がったことから、それに当てはまると感じた多くの人がシェアをし話題となりました。
私も例に漏れず、このlivedoor newsがXで流れてきたのを見てそんな言葉が流行っていることを知りました。
この記事によると「急増」しているそうですが認知症疾患医療センターである当院でもそんな噂は聞いたことはないですし、同僚たちの間でも話題になることもありません。一体どんなデータがどこで発表されたという話なのかこの記事を読んでみたのですが、少なくともこの記事では「急増」の根拠は全く示されていませんでした。
また、この記事からはスマホ認知症の定義に関してもはっきりしたことが全くわかりません。
せっかくこのニュースを読み、それに対する記事を書こうと思ったのに、ニュース内では全く根拠やデータが示されておらず、否定しようにもそもそも否定に必要な情報すら書かれていないのです。
仕方ないのでこの記事内の情報に基づいてなんとか書けることを考えてみます。
お仕事で、あれ何だっけ?と予定を完全に忘れたり、料理とか作ってて完全に途中の過程を忘れたり。ポンッと抜けちゃうイメージ。それが認知症に似ているのでスマホ認知症
引き金はスマホなどのデジタル機器を長時間利用し続けること。それにより脳が処理しきれないほどの大量の情報を受け取り、記憶障害など認知症に似た症状が一時的に発生する
と書かれています。認知症に似た症状が一時的に発生するとのことですが、そもそも認知症とは一体なんでしょうか。
そもそも認知症って?
ここで我々精神科医が診断において用いるWHOの国際疾病分類:ICD-10を見てみましょう。
認知症は,脳疾患による症候群であり,通常は慢性あるいは進行性で,記憶,思考,見当識,理解,計算,学習能力,言語,判断を含む多数の高次脳機能障害を示す.
お分かりでしょうか。
先ほどのスマホ使用による一時的に出現する症状は「脳疾患による症候群」「通常は慢性あるいは進行性」のいずれにも当てはまらず、この時点で全くもって認知症らしくないわけです。
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