救世主妄想?メサイアコンプレックスについて精神科専門医が解説
誰かの助けになりたい。
一見素晴らしいことのようですが、この感情が時に大きなトラブルを引き起こすことがあります。
これは皆さんだけではなくむしろ我々医療職、そしてその中でも心理職が気をつけるべき考え方であり、気付かずに陥っている人も少なくない考え方です。
あなたを包み込み救おうとしてくるその人は果たして本当に救世主なのかそれとも支配者なのか。
メサイアコンプレックスについて精神科専門医で公認心理師の資格も持つ藤野が解説していきます。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。是非是非登録して読んでみてください。
1. メサイアコンプレックスとは?
メサイアコンプレックス(Messiah Complex)とは、文字通り「メサイア(メシア・救世主)になりたい」という強い欲求や妄想に取りつかれる心理状態を指す俗称です。
典型的には「自分は他者を導き、救う特別な使命を持っている」と信じ、そのために行動しようとする傾向があります。極端な人では「人の役に立たなければ良い人間ではない」といった強い思い込みや衝動まで生じることもあり、しばしば救世主願望やホワイトナイト症候群とも呼ばれます。
一見素晴らしいことに思える「人のため」として生じる他者救済への過度な自己犠牲という行動パターンはさまざまな問題を引き起こします。
2. メサイアコンプレックスは病気なの?
先にも述べたようにメサイアコンプレックスは俗称であり、疾患として定義されたものではありません。そのためDSM5-TRやICD10など、我々精神科医が診断に用いる診断基準には病名として当然載ってはいませんが、精神疾患の経過の途中で出現する誇大妄想などと部分的に重なることがあるのは確かです。
しかし、教育者や医療者、宗教家など、「人を助けたい」という思いを持つ職業では、一定の使命感が必要になるのもまた間違いありません。
そのためそういった感情が生じること全てをまとめて否定することは難しいわけですが、それが過剰になった場合、当然他者や社会に対して有害に働き得るわけです。
例えばどんなパターンがあるでしょうか?