なぜ僕らは世界を見誤る?疑似相関の誤謬を精神科医が解説
「これを食べたら体調が良くなった」
「あの人と関わるようになってから運が悪い」
「スマホをよく見る子ほど成績が悪い。だからスマホが原因だ」
こうした話は、日常の中にたくさんあります。
もちろん、本当に因果関係があることもあります。
しかし、注意しなければいけないのは、「一緒に起きていること」と「片方がもう片方を引き起こしていること」は、まったく別だということです。
これは、相関と因果の混同、疑似相関の誤謬などとされ、研究や論文に関わる人たちの間では最も注意が必要で最も基礎的なものとして扱われる考え方ですが、日常生活の中では多く認められる混同です。
いったいどういうことなのか、精神科専門医で公認心理師の資格も持つ藤野が、心理学的な概念を交えてわかりやすくお話ししていきます。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと100本以上の過去記事も全て読み放題。ぜひ登録して読んでみてください。
相関と因果の差って?
「相関関係」「因果関係」という言葉は日常でもよく使われますが、改めて聞かれるとその差をはっきり説明できる人はそう多くないのではないでしょうか。
相関というのは簡単に言ってしまえば、二つの出来事や数値が一緒に変化している状態です。
それに対し、因果というのは一方がもう一方の原因になっている関係です。
相関があっても、必ずしも因果関係があるとは限りません。何を言っているか分かりにくいと思うので例を見てみましょう。
たとえば、アイスクリームの売上が増える時期に、水の事故が増えるとします。
ここには相関があります。
では「アイスクリームを食べると水の事故が増える」そこに因果は存在し、つまりアイスクリームが水の事故を増やす原因なのでしょうか?
当然そうではありませんね。
実際には、暑い季節になるとアイスクリームを食べる人も増え、海や川に行く人も増える。
その結果として、水の事故も増える。
つまり、背後に「気温」や「季節」という別の要因が考えられるわけで、このように、二つのものが同時に増えたり減ったりしていても、必ずしも一方がもう一方の原因とは限りません。
こうしたわかりやすい例であれば誰も騙されないわけですが、人は複雑な話になるとだんだんとこの基本を忘れてしまいます。
「その後に起きたから原因だ」という誤解
似たものに、前後即因果の誤謬があります。
これは、「Aの後にBが起きた。だからAがBの原因だ」と考えてしまう誤りです。
コロナワクチンの時にも、この混乱はたくさん見られました。
「ワクチンを打った数日後に体調が悪くなった。だからワクチンが原因だ」
「接種後に亡くなった人がいる。だからワクチンで亡くなったのだ」
そう言いたくなる気持ちは、理解できないわけではありません。人は、強い不安や怒りがあるときほど、原因を見つけたくなります。
特に、大切な人の不調や死のような出来事であれば、「偶然かもしれない」と受け止めることは簡単ではありません。
ただ、医学的に考えると、「接種後に起きた」ことと「接種によって起きた」ことは必ずしも即関連づけられるわけではありません。
社会全体で多くの人がワクチンを打てば、その数日後に発熱する人も、心筋梗塞を起こす人も、脳卒中になる人も、急に体調を崩す人も一定数出ます。
これはワクチンがなくても、日常の中で一定数起きている出来事です。
もちろん、その中に本当にワクチンが関係しているものが含まれる可能性は大いにあります。
だからこそ、報告を集める必要がありました。
しかし、個別の一例だけを見て、すぐに「これはワクチンのせいだ」とは言えなかったわけですね。
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