断れずに「いつも損する自分」をやめる方法
「これ、お願いできる?」「ちょっとだけ手伝ってくれる?」「二次会も来るでしょ?」
その一言に、反射的に「はい」と答えてしまう。
要領の良いあの人はいつも上手にかわしているのに。
みんなは「嫌なら断ればいい」と簡単にいうけど、それができないから困っている。
本当は忙しい。本当は休みたい。本当はやりたくない。
それなのに、気づけば引き受けてしまう。
精神科で診療をしていると、こうしたことを積み重ねた結果しんどくなってしまっている人に多く出会います。
ともすれば世間では心の強さが議論されがちですが、そもそもストレスを減らす、しんどくなりにくい環境を整えることの方がよっぽど大切で、「断り方」はそのための一つのスキルです。今までずっと断らずにやってきた人が「いきなり全て断る」なんてことは当然難しいですから、今回はちょっとずつ試せる方法をバウンダリーという概念とともにたくさん解説していきます。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと100本以上の過去記事も全て読み放題。ぜひ登録して読んでみてください。
はじめに
昨年、私は人間関係に「線を引く」レッスンという本を出しました。
これがまさにバウンダリーについて解説をする本で、1年以上経った今でも非常に好評の声をいただいています。
その一方で「そもそもバウンダリーという概念を知らなかった」「知ってもやっぱり断るのは苦手だ」なんて人の声も多く届き、やはり繰り返し詳しく伝えていかねばならないなと感じているところです。
本日はその中でも、バウンダリーを重視し、上手に断る方法についての記事です。
ちなみにバウンダリーについて語りあう、肉小路ニクヨさんとのYoutubeも前編後編合わせて70万回再生の大好評企画となりましたので、文章より映像派という方はこちらもどうぞ。
改めてバウンダリーって一体何?
バウンダリーとは、他者と自分との間に引く「境界線」のことです。
これは物理的な距離だけではなく、心理的・感情的な線引きも含まれます。というか我々が使うときはどちらかというと「心理的境界」として使うことが多いです。
自分自身の価値観や感情、時間、空間、エネルギーなどを守るための「目に見えない柵」のようなものと思ってもらってもいいかもしれません。
例えば、誰かに自分の意志とは関係なく予定を押し付けられたり、不快な発言に対して黙って耐えたりしてしまうとき、バウンダリーがうまく機能していない可能性があります。
なぜバウンダリーが大切なのか
我々の日常の悩みの多くは人間関係に起因すると言われますが、バウンダリーは、その人間関係を良好に保つための「土台」となります。
これが曖昧だったり、破られがちであったりすると、結果として自己犠牲や過剰な期待、怒り、罪悪感などの感情が生じやすくなります。
バウンダリーが健全に機能している人は、自分の限界を知っていて、それを他者に対しても尊重する姿勢を持っています。そのため、無理をせずに他人と関わることができ、結果的に相互的な信頼関係を上手に築くことができます。
今回の本題である、嫌な用事やお願いでも、バウンダリーがあいまいな人は断りきれずになんとなく引き受けてしまい、忙しくなって自分の時間がなくなりしんどくなりやすくなっていたりします。
自分の時間を「どう使うのか」「誰のために使うのか」を考えること自体が、バウンダリーを守ることにも繋がります。この記事を通し、少し考えてみてもらえればと思います。
あなたの人生はあなたのもの。あなたの時間はあなたのものです。
全部を自分のために使わなくても、少なくとも誰のために使うかはあなた自身が決めていいのです。
さて、では実際にそんな線引きをするため、上手に断るためにはどんな方法を使っていったらいいのでしょう、順に見ていきましょう。

