発達障害は「個性」ってほんと?
現在X上で【「発達障害グレーゾーン」人たちの特性こそ才能だ】と題された記事が物議を醸しています。
そもそも発達障害に関してはさまざまなビジネスがあり
「発達障害はその子の個性」「特性は才能」「障害ではない」
なんて言葉が自称専門家やなんちゃらアドバイザーの間で頻用されがちです。
それらは希望になる一方で、病院でわが子が発達障害だと言われた保護者からすれば、
「個性と言われても、『障害』なんでしょう?」「そんなふうには思えない」
と不安になるのも当然で、精神科の外来でもよく質問されることの一つです。
では、発達障害は「個性」なのでしょうか?
精神科医としての答えは、どちらも一理ある。
でも、他人が簡単に「個性」と言ってしまうのは少し違う、です。
ここには発達障害というものの定義の影響もあるのですが、自身が発達障害の方の診療を長年してきて感じた経験を含め、精神科専門医が解説していきます。
こちらの記事は後日配信用でしたが、話題のタイミングを鑑み、急遽本日配信となります。その分来週火曜日の配信が一回スキップになります、よろしくお願いします。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと100本以上の過去記事も全て読み放題。ぜひ登録して読んでみてください。
そもそも発達障害とは?
いわゆる発達障害は、我々精神科医が用いる診断基準、DSM-5-TRでは「神経発達症群」というくくりとして語られます、
神経発達症群は日常生活において様々な障害を引き起こすような発達の問題や脳内プロセスの差異が特徴で、発達期に発症する一群です。
ASDやADHDなど、世間でいわゆる「発達障害」とされている疾患だけではなく知的発達症(知的能力障害)などもここに含まれます。
今回は、その中でも比較的よく知られているASDを例に障害と個性というものについて考えてみましょう。
そもそもASDってなんだっけ?
ASDは自閉スペクトラム症の略称です。世間ではASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(限局性学習症)などをまとめて発達障害と呼ぶことが多いですが先にも述べたように厳密に言うと、我々精神科医が用いる診断基準、DSM-5-TRでASDは「神経発達症群」に属します。
かつてアスペルガー症候群と呼ばれた一群も現在ではASDに含まれることとなっており、そのイメージからかコミュニケーションが苦手という印象ばかりが先行しているかもしれませんがASDは
1.社会的コミュニケーションや対人的相互反応における持続的な欠陥
2.限定された反復的な行動、興味、活動
を2本柱とする疾患です。
国や地域にもよりますが有病率はおよそ1%、つまり100人に1人いるとされ、女性より男性に多いことが知られています。
ASDでは、対人関係やコミュニケーションの特徴に加えて、行動や興味の偏り、こだわり、感覚の特徴などがみられます。
例えば、同じ遊びを何度も繰り返す。
おもちゃを一列に並べたり、物を叩いたり、同じ言葉を繰り返したりする。周囲から見ると「そんなことばかりして飽きないのかな」と心配になることがありますが、本人はいたって楽しそうだったりします。
また、「学校へ行くときは絶対にこの道」「昼ごはんはいつも同じもの」「決まった時刻に家を出たい」といった、同一性へのこだわりが強いこともあります。
一つの対象に非常に強い興味を持つこともあります。
野球選手の背番号、昆虫、電車、道路標識、ガスコンロの型番など、大人が驚くほど細かな知識を覚え、「○○博士」と呼ばれる子もいます。
さらに、大きな音が苦手だったり、服のタグが気になったり、光や物の動きに強く惹かれたりと、感覚の受け取り方にも特徴がみられることがあります。