病気のふり?ミュンヒハウゼン症候群って一体何?精神科医が解説
少し前に、ある病院の看護師が患者の点滴に便を混入させたとして逮捕されたニュースが大きく報じられました。
「便を入れるなんて前代未聞だ」「そんなことをする人がいるのか」と、多くの人が驚いたと思います。
もちろん誰であっても、人の点滴に異物を混入することが本来あり得てはいけないことですが、実は精神科の領域では全く馴染みのない話でもありません。
精神科にはミュンヒハウゼン症候群という、自身や他者の疾患を装う病気があります。(念のために言っておきますが、今回の事件がミュンヒハウゼンだという話では全くありません。点滴に異物を混入、という点についての導入として出しただけの話ですのでここからは事件と関係ない話として読んでください。)
ミュンヒハウゼン症候群では自身や、家族を「病人」に仕立てるために、点滴に薬物や異物を混入させたり、感染を引き起こしたりすることがあります。
実際に、大腸菌などが検出されるケースも海外では多く報告されています。
「便を混入させる」という行為自体は、精神医学の世界では決して起こり得ない話ではないわけです。(何度も言いますが、今回の事件のことを言っているわけではないのでそこだけ注意して読んでくださいね。)
ではなぜそんなことが起こり得るのか、今回はミュンヒハウゼン症候群について詳しく解説していきます。
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ミュンヒハウゼン症候群って?
ここまで当たり前のように「ミュンヒハウゼン症候群」という言葉を使ってきましたが、実はミュンヒハウゼン症候群は最新の米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル:DSM-5-TR(以下DSM-5-TR)では「作為症」と呼ばれる疾患です。
ただ、イギリスの内科医・精神科医のRichard Asher(リチャード・アッシャー)が、医学誌 The Lancetに Munchausen's syndrome というタイトルの論文を発表し、
この患者たちは、有名なミュンヒハウゼン男爵のように各地を旅し、その語る話も男爵の物語のように劇的で真実ではない。そこで、この症候群を男爵に献じ、その名を冠することにした。
と語ったことから、18世紀ドイツのミュンヒハウゼン男爵にちなんで、深刻で慢性的な病態がミュンヒハウゼン症候群と呼ばれるようになり、今ではそちらの名前の方が有名になっていたりします。
作為症
では、そんな別名までつけられるほどの疾患、作為症というのは一体どんな病気なのでしょうか。
端的に言ってしまえば作為症は、自分で症状を作ったり、病気を装ったりする精神疾患です。