適応障害と過剰適応を精神科専門医が丸わかり解説
精神疾患を有する総患者数が600万人を超える(厚生労働省「患者調査」)大ストレス社会において、聞くことが増えてきたのが「適応障害」という言葉。
・同僚が適応障害になったと聞いた
・なんかしんどくてネットで調べたら適応障害っぽかった
そんなふうに身近になってきているものの詳しくは知らないぞという人のために解説をしていきます。
・そもそも適応障害って何?
・なぜ適応反応症になるのか
・過剰適応って一体何?なぜ過剰適応してしまうのか
・過剰適応から抜ける第一歩
などなど
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと70本以上の過去記事も全て読み放題。是非是非登録して読んでみてください
そもそも適応障害って何?
先ほどから「適応障害」という言葉を用いてきましたが、実はこの疾患は最新の米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル:DSM-5-TR(以下DSM-5-TR)では「適応反応症」と呼ばれるようになりました。
ここではその基準に合わせ、以下「適応反応症」と表現していこうと思います。
適応反応症ははっきりと確認できるストレス因子に反応して、情動面や行動面の症状が出現する疾患です。
要は何かしんどい出来事があり、それから一定期間の間にしんどくなり様々な症状が出るといういわゆる心因性の疾患です。そのため、ストレス因子が集結すれば、6ヶ月以内に症状が改善するとされています。
精神科の疾患に関して理解する上で非常に重要となる内因、心因、外因という考え方に関しては過去の記事でも書いていますのでぜひご覧ください。
ただそれがめんどくさい方のために、心因、内因についてだけここで引用します。
【心因性】
心因性の疾患は皆さんもイメージがしやすいものかもしれません。何か外的なストレスに対して反応的にしんどくなり症状が出る、そしてそのストレスが消失すれば自然と症状は軽快していくような物を指します。その人の生活史を見たときに、その人のその状況であればそういった気持ちになりそういった症状をきたすだろうなと理解が可能な物です。
例えば前日、同僚に陰口を言われていたことがわかり言い合いになってしまった。その日は眠れず、翌日も会社に行こうと思ったらお腹が痛くなってきた。これは脳に問題が生じていなくても十分に起こり得ることとして理解が可能ですし、同僚と仲直りができればもしかしたらその日のうちに症状は良くなるかもしれません。
【内因性】
それに対し、内因性の精神疾患では外からの影響からある程度独立して自律的に障害が生じます。ここには遺伝的な素因や生活史的積み重ねなどが影響し、ある程度までは可逆性、可塑性を持つと考えられています。
生活史上の特定の出来事がその発症において大きな影響を持つことはありますが、だからといってその出来事が解消されても適切な投薬や休息が得られなければ病態は一定程度まで進行、悪化します。難しい言葉ばかりで嫌になりましたよね?わかりやすく例を上げましょう。
例えばうつ病。とてもひどい上司がいて、パワハラを受けうつ病が発症したとします。食事は取れず、眠れない。意欲の低下、抑うつ、自分はとんでもないことをしてしまった、取り返しがつかないという絶望。それらに支配され生じてくる希死念慮。
これはこの上司がある日クビになりいなくなったとしても、当然翌日にスパッと良くなるものではなく、きっちりとした治療が一定期間必要になることが想像できるかと思います。
そういった意味で昔ながらの内因性のうつ病などとは毛色の違う疾患となるわけです。
もちろんその程度がひどくなれば著しい苦痛をもたらすこともあり、休職の原因となることも少なくない疾患ですが、これに関しては非精神科医がバイトをしているコンビニクリニックなどが何でもかんでも「適応障害」として休職診断書を乱発する問題なども生じており難しいところで、同じような話を過去記事でもしているので今回はそこには触れずにいきます。