ギャンブル依存と悪化要因、イネーブラーって一体何?精神科医が解説
年が明け、忙しい日常が戻ってきて疲弊している人も少なくないのではないでしょうか?
そんな時に現実逃避として逃げ込みたくなるものの一つがギャンブルです。
「1億円当たったら仕事をしなくていいのに」
「パチプロになって働かずに生きていくんだ!」
そんな夢を見たことがある人もいるでしょう、というか私自身がまだまだ、諦めておらず暇ができたらドバイに行って宝くじを買おうと虎視眈々と狙い続けています。
知っていますか?ドバイでは観光客の誘致も兼ね非常に高確率、なんと1/5000で1億円以上が当たる夢の宝くじが売っているのです!
失礼、話がそれました、ギャンブル依存について語る記事で危うくギャンブルの素晴らしさを語ってしまうところでした。
ストレス解消、夢を持つ、そんな楽しみの範疇でやるのであれば必ずしも悪とは言えないギャンブルでもその衝動を制御できなくなればそれは「疾患」として時に大きな問題を生じ、家族や仕事、人生など大切なものを失うことにつながります。
そして家族や友人がそうなった時、みなさんが知らず知らずのうちに疾患の悪化を導くイネーブラーになってしまうことがあり、そうならないためには正しい知識が必要です。イネーブラーとは何か、そうならないためにはどうしたらいいのか、精神科専門医が解説をしていきます。
なお、巷では「ギャンブル依存症」などと呼ばれることも多い疾患でその方がみなさんも聞き馴染みがあるかと思いますが、今回の記事では米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル:DSM-5-TR(以下DSM-5-TR)に則してギャンブル行動症と統一して表現していきたいと思います。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。腰が痛い中ヒーヒー言いながら必死に書いています。是非是非登録して読んでみてください。有料登録をすると無料記事に加えて毎月2本の有料記事、そしてなんと数十本の過去記事も全て読み放題になります。
世は大ギャンブル時代
2024年、大谷翔平選手の専属通訳として活躍していた水原一平氏の違法賭博問題が大きな話題をさらい、ギャンブルへの依存がその恐ろしさを含め注目を集めました。
しかし、翌2025年にはどこ吹く風、オンラインカジノを利用して逮捕や捜査の対象となる人が続出、日曜劇場では競馬の世界を舞台とした「ザ・ロイヤルファミリー」が好評を博し、年末の有馬記念では入場券の転売騒動や21世紀初となる売上700億円越え達成など例年にない盛り上がりをみせました。
年末ジャンボには行列ができ、万博跡地ではカジノ構想が動く、まさに世は大ギャンブル時代です。
日本におけるギャンブル
そうはいってもギャンブルという存在をあまり身近に感じていない方もいるでしょう。
現在日本で行われている公営競技は4つあります。競馬、競輪、オートレース、ボートレース。
これらの競技はギャンブルに縁遠い人にはあまり聞き馴染みがないかも知れませんが、実はボートレース一つとっても、2024年度の総売上額は2兆5227億8258万2100円と、とてつもない額が動く一大興行で、なんとなく聞き流しているかもしれませんが昨今ではテレビでも大々的に俳優さんなどを起用したCMが流れていたりして我々の日常に少なからず入り込んできています。
また意識をしていないかもしれませんが、実は宝くじも還元率は低いものの立派なギャンブルの一つだと聞くといかに無意識に我々はギャンブルの波に巻き込まれているかがわかるかもしれません。
街を歩けばパチンコ店が並び、電車の広告には宝くじの宣伝が貼られている世の中でギャンブルと関わらない生活というのは実は非常に困難です。(もちろん、パチンコは「景品交換」という名の三点方式によって形式上は合法、そしてギャンブルではないという枠に収まっていますが。。)
性格の問題では?
さて、そんな身近にあるギャンブルに関わったからといってみんながみんなギャンブル行動症になるわけではありません。
「結局ギャンブルが我慢できないって、要は単なるだらしない性格の人なのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、ギャンブル行動症は、DSM-5-TRにおいては「物質関連症及び嗜癖症群」に分類され、その中でもいわゆる薬物などの物質への関連症ではない非物質関連症群にカテゴライズされています。
難しいことはさておきここで重要なのは、ギャンブル行動症が「物質関連症及び嗜癖症群」に含まれているということです。
これはギャンブル行動が乱用薬物によって活性されるのと類似の報酬系と呼ばれる脳の回路を賦活し、物質使用症によって生じる行動の症状と同等であるように見える症状を生じさせるというデータが反映された結果定められた分類です。現に例えば「性嗜癖」「買い物嗜癖」など、十分なデータがないものなどはここに含まれておりません。
つまり、ギャンブル行動症と診断される段階では単に自制心やだらしなさといった性格の問題を超え、脳の問題となっていることを示しています。