「地域で支える」は、いったい誰が支えるのか。精神科の長期入院をめぐる、きれいごとでは済まない話
物価が上がり、国民の生活は苦しくなり、社会保険料や税金の高さが槍玉に上がります。
そんな時、しばしば取り沙汰されるのが精神科の長期入院の話題です。
「日本の精神科病院は入院期間が長すぎる」
「諸外国では精神科病院を減らしている」
「もっと地域移行を進めるべきだ」
「患者さんを病院に閉じ込めてお金を稼いでいるのは、医者や病院の利権ではないか」
確かに、日本の精神科病院の入院期間が長いことは事実です。
長く入院している人が、早期に回復し、安心して退院できるなら、それは間違いなく素晴らしいことでしょう。
退院できる人は退院したほうがいい。地域で暮らせる人は、地域で暮らせたほうがいい。
人権を高らかに叫ぶ自称専門家達もメディアではそうやって囃し立てています。
ではなぜそうならないのか。本当に医師会や医者の利権のせいなのでしょうか?
患者さんを退院させなければ我々精神科医は得をするのでしょうか?
病院と医療刑務所、実際の臨床現場に立ち続けてきた、精神科専門医が解説していきます。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと100本以上の過去記事も全て読み放題。是非登録して読んでみてください。
精神科の入院期間は短くすべきなのか?
精神科の入院期間は短くすべき
実はその理想そのものに、私は反対したいわけではありません。
ただ、問題はその先。
「退院させるべき」と言うのは簡単。
では、その人は退院したあと、どこで、誰に支えられて、生きていくのでしょう。
厚生労働省の検討会資料でも、地域移行支援、地域定着支援、宿泊型自立訓練、グループホームなど、精神科病院から地域生活へ移るための支援制度は説明されていて、実際、地域移行そのものは国の政策としても進められています。
しかし、制度があることと、現実にその人が安心して暮らせる場所があることは同じではありません。
長期入院は病院のため?
メディアなどで精神科の長期入院が槍玉に上がるとき、しばしば「病院が儲けるために患者を入院させ続けている」という話が、いかにもそれらしく語られます。
もちろん、病院経営という観点から見れば、空床よりは入院患者がいたほうが収入になります。
しかし、現在の医療保険制度の仕組みから言えば「同じ患者さんを長期に入院させ続けること」が、病院にとって常に最も利益になるわけではありません。
むしろ新しい患者さんが入り、治療し、退院し、また新しい患者さんが入るほうが、病院経営としては回転がよくなり、利益は上がります。
そして何より、実際にその患者さんを診ている勤務医の多くは、病院経営のために患者さんを退院させない、という視座で動いていません。
医者を買い被りすぎるな
一般社会で働いている人からすると信じられないかもしれませんが、医師というのは病院の利益に対して、驚くほど頓着しない生き物です。
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