HSPブームの何が問題なのか。
数年前、一世を風靡しテレビ、書店の心理学コーナーを総なめしたHSP(Highly sensitive person)、繊細さん。この概念と出会い、日々の生きづらさの原因を見つけた気がして救われた気持ちになった人も多かったのではないでしょうか。
その影響力の大きさから現在でもネット上ではあらゆる繊細さんの特徴がバズり、HSPを自称する人が溢れ、専門カウンセラーなんてものを名乗る者、そして残念なことに医師の中にすら未だにHSPに関して嘘八百を並べ立てる者がいる始末です。
この訴求力にメディアも飛びつき、HSP特集の番組に出てほしい、本を書いて欲しいと言う依頼が私にも山ほどきましたが、取材の中でHSPについて事実を語るたびにその仕事は没になり、ブームを盛り立ててくれる別の医療者に依頼は移りました。
今日はこの作られたHSPブームの何が問題なのか、自身がHSPではないかと思った方は何を知り理解しておくべきなのかを書いていきます。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。是非是非登録して読んでみてください。
そもそもHSPって何?
そもそもHSP、繊細さんとは一体なんなのでしょうか。
ネットで調べればすぐにチェックリストのようなものがたくさん出てきますが内容がそれにより異なるのでここではひとまずみんな大好きwikipediaを引用して見てみましょう。
環境感受性 あるいはその気質・性格的指標である感覚処理感受性 が極めて高い人たちを表す言葉である
テキトーなチェックリストよりは当てになりそうなことが書いてありますね。
実はこの「環境感受性」についてはある程度研究がされています。
同じ出来事に対して、人は当然それぞれ異なる知覚や処理をするわけですがその感受性には当然個人差があります。その分布はいわゆる正規分布の形になることが知られていますがあんまり難しく考えず、要はこの図のように分布していて、平均的な人が一番多いと思ってください。

すると中には極めて高いゾーンに属する人がいて、その人は他者と比べ感受性が高いと言えるわけです。しかし、ここで大切なのはこれがすなわち世間で言うHSP、繊細さんとそのままイコールな訳ではないということです。これが示すのはあくまで環境の感受性はこういった形で分布していて個人差があるというデータであり、HSPとしてどこで線を引くのか、そもそも線を引くべきものであるのかなど議論は尽きません。きちんとした研究用の尺度を用いてもまだその輪郭がはっきりしていない、つまりどこからどこまでの範囲がHSPだという共通の定義がないゆえに、みなさんはそれぞれがテキトーなチェックリストを使って自己判断をすることになっているわけです。
ではそれの一体なにが問題なのでしょう?