「普通に見える」けど生きづらい―境界知能というグレーゾーンの現実
「境界知能」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ネット上では半ば差別的に使われることもあるこの言葉。
知的障害の診断には至らないものの、平均に満たない知的能力ゆえに生きづらさや困難さを抱え、支援が受けられず苦しんでいる人はたくさんいます。
いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれたりもするこれらの人々は見た目や話し方では区別がつかないことも少なくなく、自分や家族がそうであることに気づいていないことも少なくありません。
なんせ世の中の半分の人はIQが100以下なわけですが、世の中のほとんどの人が自分のIQが100以上あるという前提で日々生きています。
今回はIQとは一体何なのか、そして境界知能とその現実とは、という話を精神科専門医で公認心理師の資格ももつ藤野が解説していきます。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。腰が痛い中ヒーヒー言いながら必死に書いています。是非是非登録して読んでみてください。有料登録をすると無料記事に加えて毎月2本の有料記事、そしてなんと50本以上の過去記事も全て読み放題になります。
IQとはそもそも何か
知能指数(IQ)は、知的能力を心理検査により数値化した指標です。
IQは以下の図のような正規分布となるように作られていて、平均的な値となる人を中心にそれ以上の人、以下の人が同数になるよう分布しています。
つまり、IQにおいて、IQが100より高い人と低い人は同じ数だけいます。
漫画の世界にはIQ200なんて天才キャラクターゴロゴロいますが、現実社会ではそもそもIQが100より高い人が世の中の半分しかいない、という現実をまず知りましょう。
ただ、IQというのはあくまで知能検査において測れる範疇の能力についてなので、得られる情報には限りがあり、それだけで人生の全てが決まるわけではありません。
『IQとは一体何か、と問われれば「IQ検査で測れるもの」と答えるしかない』なんてトンチを言う人がいるほど、IQというものは評価や定義が困難なものです。