褒めれば子どもの「自己肯定感」は高くなる?精神科医が解説
「子どもの自己肯定感を高める方法」
子育てについて調べていると、本当によく見る言葉です。
「子どもをたくさん褒めましょう。」
「否定してはいけません。」
「『すごいね』と伝えましょう。」
果ては「自己肯定感を高める声かけ3選!」みたいな誰が考えたのか、どんな研究をしたのかもわからない(というか当然研究などなされていない)根拠のない話がたくさん出てきます。
でも、精神科医としてこういう言葉を見ると、まず気になることがあります。
そもそも「自己肯定感」って何なのでしょう。
実はこれ、みなさんが思っているほど簡単ではありません。
心理学には昔から self-esteem(自尊感情) という研究領域があり、日本でも多くの研究が行われています。一方、私たちが日常的に使う「自己肯定感」は、自尊感情、自己受容、自信、自己効力感など、少しずつ違う概念をまとめて指していることがあります。
実際、国内の文献レビューでも、自己肯定感の定義は研究者や領域によって異なり、自尊感情や自己受容との関係も明瞭ではないことが指摘されています。
にもかかわらず、『自己肯定感を高める方法』となるとなぜか突然ものすごく具体的な話がたくさん出てきますし、メディアは研究結果などなくても「これをすれば自己肯定感が上がる」みたいなことをテキトーに話してくれる自称専門家を持ち上げます。
(こういうことを口うるさくいうせいで何度メディアの出演の話が飛んだかわかりません 笑)
一方、self-esteem(自尊感情) については膨大な研究があります。
self-esteem研究で有名なRosenbergの考え方では、自分自身に対する全般的な価値の評価、つまり「自分には価値がある」と感じられる程度に近い概念です。
今回はある程度きちんとした研究が蓄積されている自尊感情についてみていきます。
さて、子どもを褒めれば自尊感情は高くなるのでしょうか。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと100本以上の過去記事も全て読み放題。ぜひ登録して読んでみてください。
「褒めるのはいいこと」だったはずが…
「褒めるのはいいこと」の根拠としてよく用いられるのが、心理学者Carol Dweckらの研究です。
1998年、小学5年生を対象としたこの研究では、「頭がいいね」と能力を褒める場合と、「よく頑張ったね」と努力を褒める場合の違いを調べました。
すると、能力を褒められた子どもは、努力を褒められた子どもより、学ぶことそのものより「自分が賢く見えること」を重視しやすくなりました。さらに難しい課題で失敗を経験したあとには、粘り強さや課題を楽しむ程度が低下し、その後の課題の成績も悪くなりました。
この研究自体は褒めることの良さを検証したものではなく、どう褒めることで何が変わるのかについて調べているわけですが、こうした研究は、Dweckが以前から研究していた「能力は固定されたものなのか、それとも伸ばせるものなのか」という考え方ともつながっていきます。
そうした研究の積み重ねで広く知られるようになったのが、Growth Mindset(成長マインドセット)です。
これは能力や知能は生まれつき固定されたものではなく、学習や経験によって伸ばしていける、と捉える考え方です。
「褒めて伸ばす」なんて話が流行った一因ですが、先ほどの「頭がいいね」より「頑張ったね」という研究がこの考え方と結びつけられて、「褒める」→「自己肯定感が上がる」→「成績が上がる」みたいに本来の意味を失い、さまざまなメディアで繰り返し紹介されるようになりました。
ところが、実はここから話はもう少し複雑になります。
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