アダルトビデオから学ぶ人たち
少し前にある性犯罪事件の裁判を傍聴に行きました。
その裁判では精神鑑定を行った医師が、被告人は自閉スペクトラム症(以下ASD)といわゆる境界知能であり、アダルトビデオ(以下AV)で描かれる内容が商品として脚色されていること、つまり現実とは異なるという背景の理解が不十分だった可能性があるという点を指摘していました。
この事件自体はまだ裁判が進行中であり、障害が関与したかどうかは裁判で判断されることですのでここでは議論しません。
ただ性犯罪とその内容に関してAVの視聴が悪影響を与えているのではないかという議論を見かけることは少なくありませんので、今回は精神科医、そして医療刑務所で働く医師の視点からAVと性犯罪について少し話をしてみようと思います。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。腰が痛い中ヒーヒー言いながら必死に書いています。是非是非登録して読んでみてください。
さて、「AV大国日本」なんて言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
私もなんとなくそんなイメージがあったのでこの記事を書くにあたり、他国よりAVの発売本数や視聴者数が多いのかと思いざっと調べてみたのですが実はあまりエビデンスのはっきりしたデータは拾えませんでした。
ただ確かに世界的にもアクセス数の多いアダルト動画サイトpornhubでは毎年最も検索されたワードの上位にhentaiやjapaneseなど日本と関わりが深い言葉が並んでいます。

これは日本人も含めた世界中の人の検索結果が合わさっているので、これだけで何かが語れるわけではありませんが、少なくとも日本とアダルト動画がとても疎遠だということはなさそうです。
厳密に言えばネット上で検索されているアダルト動画は日本できちんとAVとして制作されたものではないものも多く含まれていると思われますが当初の話通り、今日はAVの話をしていきます。
さて、ではそのAVは性犯罪とどう関わるのでしょうか。
ポルノグラフィの使用は犯罪を増加させる?
性犯罪について語られる時によく持ち出されるのが、ポルノグラフィの使用が性犯罪を惹起するのではないか、すなわちフィクションであれ、性犯罪の描写などがあるポルノグラフィに触れることで性犯罪が増えるのではないかと言う話です。