聞こえたらやばいの?幻聴の真実 精神科医が解説
「誰かに呼ばれた気がする」
「名前を呼ぶ声がした」
「家族がずっと誰かと会話している」
もしかして幻聴?病気なのかな?
そんなふうに不安になったことがあるという人は実は意外と少なくないのではないかと思います。
今回は幻聴とは何か、幻聴が聞こえたら治療が必要なのか、家族はどうしたらいいのか、などについて精神科専門医の藤野が解説していきます。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。是非是非登録して読んでみてください。
そもそも「幻覚」とは何か
まず、「幻聴」という言葉の前に、「幻覚」という概念を整理しておきましょう。幻覚とはフランスの精神医学者エスキロールによれば「対象なき知覚」であり、つまり実際には存在しない対象を存在するかのように知覚するものです。
よく間違えられやすいものに錯覚がありますが、錯覚では現実に存在する素材がゆがんで知覚されるのに対し、幻覚では全く素材がないのに知覚が起こります。
さらに幻覚は実在性の確信の度合いにより真性幻覚と偽幻覚とに分けることができます。
わかりやすく言えば、その幻覚を「確実に存在している」と感じ、実際に存在する知覚と認識する真性幻覚と、幻覚として感じてはいるものの、実際には存在しないかもしれないと理解もでき得る偽幻覚といった感じでしょうか。
幻聴
幻覚には幻触、幻嗅、幻味、平衡覚幻覚(平衡機能障害がないのに、自分の体が傾いたり回転していると感じる)などさまざまなものがありますがその中でも比較的みなさんにも馴染み深いのは幻聴ではないでしょうか。
幻聴は北米では精神病において最も多く認められる幻覚とされていますし、文化圏によっては普通の表現として亡くなった家族からの励ましや、明らかな言葉を聞くことがあります。
また疾患の症状としての幻聴は、激しい興奮や精神症状が落ち着いた後に残存することもあり、特に害はないけれども幻聴との対話を街中で続けている人を見かけたこともあるかもしれません。