慢性的な空虚感 ボーダーラインパーソナリティ症の8つの特徴を精神科医が丸わかり解説
かつては境界性人格障害と呼ばれ、現在、精神科医の用いる診断基準DSM-5-TRではボーダーラインパーソナリティ症と呼称されるこの疾患。
対人関係や自己像、感情などの不安定さや衝動性が特徴とされ、その激しい行動様式に振り回され困ってしまった人、自分もそうなのではないかと不安な人、さまざまいるかと思います。
「メンヘラ」などの言葉を批判的に向けられ辛い思いをしている方の中にはボーダーラインパーソナリティ症の患者さんも多く含まれていると言われています。
周りにそういう人がいて困っている、自分がそうかもしれない、なぜ相手とうまくいかないのか。そんな不安がある方は是非この機会にまずはこういった疾患があるのだということ、そしてできれば、なぜそのような行動に出てしまうのかまでこの記事を読んで知識、理解を深めてみてもらえればと思います。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。是非是非登録して読んでみてください。
そもそもパーソナリティ症って?
そもそもパーソナリティ症(パーソナリティ障害)とは、
規範やその人が属する文化から期待されるものから著しく偏り,広範でかつ柔軟性がなく,青年期または成人期早期に始まり,長期に渡り変わることなく,苦痛または障害を引き起こす内的体験および行動の持続的様式
とされています。つまり
認知(出来事を知覚し解釈する仕方)や感情性(情動反応の強さ、不安定さ)、対人関係機能、衝動の制御などが著しく偏っていることにより社会での生活に大きな障害をきたしているわけです。
ではその中でも、ボーダーラインパーソナリティ症にはどのような特徴がみられ問題となるのか早速、具体的に見ていきましょう。
1.見捨てられ不安とそれを避けるための努力
パートナーや友人、家族など大切な人たちから見捨てられるのではないかと過度の不安を持ち、それを回避するためにさまざまな行動に出ます。例えば「返信が遅い」「批判的なことを言われた」などといった些細なことでも、そこから見捨てられるのではないかという不安が大きくなり「返信が来るまで頻回に連絡をする」「相手を繋ぎ止めるために物をプレゼントする」「性的なアピールを行う」なんてこともあります。相手によってはその必死さに怖くなってますます距離をとられることもありますし、逆に悪い相手に捕まれば搾取をされることとなり、この努力はあまり報われないことも多かったりします。
2.理想化とこき下ろし
我々は日常の中でただの友人、パートナーになり得る人、職場の人、病院の主治医など多くの役割の人と会い、適切な距離を図って必要な深さの関わり方をします。しかし、この疾患の患者さんは数回会っただけで相手が自分の面倒を見てくれたり、恋人になり得ると考え距離を詰めてしまうことがあります。「相手に長い時間を一緒に過ごすよう要求する」「特別な関わりを求める」「非常にプライベートな話を早いうちから共有する」恋人であれば最初は嬉しいかもしれませんが当然ずっとは続きません。そして相手が自分の欲求を十分期待通りに満たしてくれないとわかるとこれまでの好意は一転、激しいこき下ろしが始まります。これには自分の全てを受け入れてくれると理想化していた相手に拒絶され、見捨てられるかもしれないという不安も大きく影響しています。
精神科においても「こんなにいい先生は初めて」と言っていた患者さんの要求がどんどん増え、それが叶わないと知ると数回後には罵詈雑言を長時間ぶつけるようになるということもよくあり、精神科医がそう言った褒め言葉を間に受けすぎず、患者さんときちんとした距離感をとる必要があると言われる典型的なパターンです。