殺害予告されたからグランドキャニオン来た話
警察から事件のあらましを聞き電話を切る頃、僕は既にこう思っていた。
「よし、グランドキャニオンに行こう」
ことの起こりはある寒い日の夕暮れ時。
夕暮れ時と書きましたがまだ日が短くなる前でしたから19時台でしょうか、仕事を終えて帰宅をした私の、それこそXの更新くらいでしか役に立たないはずの携帯が着信を告げました。知らない番号です。
「もしもし、藤野さんの電話でよろしかったでしょうか?」
我々医師はちょくちょく職場などから名簿が流出し、その名簿を買った悪徳不動産屋などから電話がくることが少なくありませんので私は受けた電話では名乗らないようにしています。
ワンルームマンションなんて買ってたまるか!!という気概を伝えるべく、無愛想に返事をします。
「どちら様でしょうか?」
「愛知県警です」
!?!?
ヤバイヤバイヤバイ、どうしよう、一体何がバレたのだ???
いや、そもそもそんな悪いことしたっけ???
「自称イケメン精神科医逮捕」「刑務所勤務なのに刑務所へ」そんな見出しが頭をよぎる中、走馬灯の如く頭をフル回転させた結果、幸いにも今のところお上のお世話になるようなことをした心当たりがなかった私はここでピーンときます。
はは〜ん、詐欺だ!!
進研ゼミで習ったやつだ!!!!
そうとわかればこちらのものです。
「何の用ですか?」
警察に対してとは思えない不遜な態度で、余裕で詐欺だとわかってるんだぞアピールをします。
「昨年藤野さんが関わった事件についてなのですが」
ほほぅ、わしが一体何の事件を起こしたと言うんや、ほら、はっきり言うてみぃ?
そう言いたいのを堪え、
「何の事件ですか?心当たりがないのですが」
と慎ましく言ってみます。
ちなみに良い子のみんなは詐欺だと思ったら無駄に話をしてはダメですよ。即切り、即通報です。ちなみに詐欺の電話がかかってきてどうしたら良いかわからない場合は、いきなり110番ではなく、警察相談専用電話#9110に電話をすると親切な警察の人が相談に乗ってくれますよ
「藤野さんを相手とした脅迫事件で」
!?!?
雲行きが変わってきます。
確かに私は昨年、殺害予告を受け、開示請求をして民事裁判を起こしましたし、その犯人は刑事罰も受けました。
詐欺じゃない、、だと???
でもまだわかりません。その事件の関係者が仕返しのために電話をかけてきたのかもしれません。
「あ、ちょっと待ってください。ほんとに警察からの電話かどうか調べますね〜」
焦りを悟られぬよう、余裕なふりをして携帯に表示された番号を見ます。

惜しい!!!
警察の電話は下3桁が110になってるって知ってるんだよ、ツイ廃を舐めるなよ!
と思いながら念の為にネットでその電話番号を検索します。

!?!?!?
ほほぅ、やるじゃないか。。でもそのパターンも知ってる。最近はナンバーディスプレイの表示をごまかせるような詐欺電話もあるんだろ?
頭の中でそんな寸劇を繰り広げ、電話への応対がお留守になっている私を知ってか知らずか、自称警察のおじさんは話し続けます。
「犯人の名前は何だったかな、、あぁ、、高木(仮名)とかいうやつで、覚えてますかね?」
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。寒くなってきて腰が痛い中ヒーヒー言いながら必死に書いています。是非是非登録して読んでみてください。