自分や大切な人がうつかもと思ったら読んでほしい話
自分や大切な人が「うつ」ではないかと疑ったとき、焦りから間違った情報に踊らされ騙されてしまわぬよう、まず知っておいてほしいことを精神科専門医がまとめて解説します。
近年「うつ」という言葉が汎用されるようになり身近に感じる人が増えた一方で、精神疾患は自身とは関係ない、心の弱い人間がなる病気だと考えている人もまだまだいます。
実際、精神科に受診される患者さんの多くは「まさか自分がうつになるなんて思わなかった」と話されます。そういった方々にとって病気は突然訪れる予想外の出来事ですから、なって初めて情報収集が始まります。平時であれば冷静に正しい情報を手に入れられる方でもそんな時ですので何の専門家でもないインフルエンサーが出しているトンデモ本に手を伸ばしたり、広告料を多くはらって検索の上部に表示される病院にかかってしまったりします。その結果、本来適切な治療を受ければ短期間で回復できたのに、長期に渡り悩まされる人が後を断ちません。
専門家でない人間の思いつきや稼ぐために作られたシステムで病気は良くなりません。なぜなら彼らはトンデモ本を買い続けてほしいし、自由診療の高い治療を受け続けてほしい、つまりよくなってもらったら困るのです。
ただこれは騙される人間が悪いわけではなく、売れるためなら眉唾でも出版する出版社、金さえ払えばひどいクリニックでもPRを出させる検索サイト、患者さんが正しい情報にアクセスしづらい世の中、そして発信力が弱いまま、たまたま病院に辿り着けた人だけを治療し満足している我々医療者にも問題があります。
私はメディア活動を続ける中で、過去に何度も「正しいうつについての話」を書こうと提案したことがありますがその度に出版社は首を横に振ります。なぜなら当たり前のことを書いてもそんな本は売れないからです。明らかな嘘であっても「食べ物でうつ病が治る」「ハンドパワーで癌が消える」ような本の方が売れるのです。
医者のような仕事の人間がヒーローになるのはとても簡単です。通常の医療では行えないこと、治らないことを「行えます、治せます」と自信満々に語ることです。9つ病院を巡りできないと言われたことを10件目の病院がやってくれると言った時、多くの場合それは美談ではなく、藁にもすがる気持ちの人間をはめ込むエセ医療です。
そんな被害者を減らすため、ここでは自身や大切な人が「うつ」ではないかと思った時に知っておくべきことをまとめました。いろいろ書きたいことはあるのですがしんどい時に読めること、理解できることには限りがありますのでまずは2点。
・うつ病?うつ状態?そもそも「うつ」って何なのか??
・「うつ」だと思ったらどんな病院にかかったらいいの?心療内科?精神科?怪しいクリニックに騙されないために
この2つのテーマを2週に渡ってお届けしていきます。
これだけでも自身や大切な人が置かれている状況、これからどうしたらいいかの理解、整理にはつながるでしょう。他人に相談しづらい悩みの中で迷える人達を虎視淡々と狙っている詐欺師達に騙されないためにも是非読んでみてください。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。是非是非登録して読んでみてください。