うつ病で食事が作れなくなる?選択コストの話 精神科医が解説
うつ病になると料理ができなくなるという人がとても多くいます。
もちろん気力がないとか、食欲がないとかさまざまな要素が関わっていますが、そこには料理というものの行程の複雑さが関わっています。
こういうことを言うと、「簡単なものでいいのに」なんてすぐ言う人がいますが、何もわかっていません。簡単なものを作るのにも、そこまでにさまざまな思考や選択、そして行動が必要になるのです。
選択のコストは払っていない人には目に見えませんが、最近のAI疲れは「選択コスト」によるものだという話もよく聞くようになりました。
AIに質問すると自分では思いもよらないようなたくさんの選択肢を与えられ、その結果選ぶ負担が増えているという話です。
選択のコストを自分で払うことにはそういった、疲れてしまう面もある一方自身の行動に責任をとって主体的に生きるために必要な面もあります。
今日は、そんな珍しく意識が高そうな話をしていきます、疾患の解説ではないです。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと100本以上の過去記事も全て読み放題。是非登録して読んでみてください。
日常で当たり前に行われる選択のコスト
「今日の夜ごはん、何がいい?」
そう聞かれて、
「なんでもいいよ」
こんなふうに答える人は多いと思います。
もちろん、本当に何でも良いという意味のこともありますが、毎回のようにこれを繰り返しているなら、少しだけ考えてみてもいいかもしれません。
料理には、作る作業だけではなく、その前にたくさんの判断があります。
何を食べるか。冷蔵庫に何があるか。昨日と被っていないか。栄養のバランスはどうか。何時から作り始めれば間に合うか。
そんなことを考えながら買い物に行き、数日分の献立を考えながら、材料をなるべく余らせないように買う。
つまり、「献立を決める」というだけでも結構な仕事です。
うつ病になると料理ができなくなるのはもちろん意欲低下などの影響もありますが、それだけではなく、思考が回らなくなるので、何を食べるか決める、手順を組みたてる、必要なものを選んで買う、といった一つ一つの選択判断そのものが大きな負担になるわけです。
普段は気にも留めないような「選ぶ」という行為にも、実は大きなエネルギーコストがかかっているのです。