髪の毛を抜く?皮膚をむしる?精神科専門医が解説
考え事をしていたら、いつの間にか髪の毛を触っていた。
気づけば、かさぶたやニキビをいじって剥がしたり潰したり。
そんな経験は、多くの人にあると思います。
その一方で、触るだけにとどまらず、「髪を抜くことがやめられない」「繰り返し皮膚をむしってしまう」「やめたいのにやめられない」という状態になることがあります。
特にお子さんの場合、ある日頭に円形の薄い部分を見つけたり、眉毛やまつ毛が減っていたりすると、親御さんは驚きます。
「ものすごいストレスを抱えているのでは」
「このままずっと続いたらどうしよう」
不安になり皮膚科に行ったり、そこから紹介されて精神科に来られる方が少なくありません。
今回は、意外と多い、抜毛症(ばつもうしょう)と皮膚むしり症についてお話しします。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと100本以上の過去記事も全て読み放題。ぜひ登録して読んでみてください。
「癖」と「病気」
かつては「抜毛狂」なんて名前で呼ばれていたこともあった抜毛症は、その名の通り、自分の髪の毛や眉毛、まつ毛などを繰り返し抜いてしまう病気です。
ただし、当然単に髪をいじる癖や抜くことがあるだけで抜毛症と診断されるわけではありません。
我々精神科医が用いる米国精神医学会の診断基準、DSM-5-TRでは、抜毛症は「強迫症および関連症群」に分類されています。強迫症、ためこみ症、身体醜形症などと同じグループです。皮膚むしり症も同じグループに入っています。
抜毛症では、
・繰り返し毛を抜き、結果として毛が失われている
・減らそう、やめようと何度も試みている
・そのことで苦痛を感じたり、学校、仕事、人間関係などに支障が出ている
といったことが診断上重要になります。
単に触る癖や抜いてしまうだけではなく、やめようと思ってもやめられない、強迫的部分やそれによる苦痛が重要視されるわけです。
皮膚むしり症も同様で、皮膚を繰り返しむしって傷を作り、やめようとしてもやめられず、生活に支障が出ている状態です。
ですから、子どもが時々髪を触ったり、かさぶたを剥がしたりしているだけなら、それだけで病気だと慌てる必要はありません。