〜推し活の功罪〜精神科医が解説
「推しがいるから仕事を頑張れる」
「ライブの予定があるから、それまでは生き延びようと思える」
そんな話を聞くことがあります。
アイドル、俳優、スポーツ選手、アニメのキャラクター、VTuber。
オタクと揶揄されたのは過去のこと、対象がなんであっても、好きな人やキャラクターを応援する、いわゆる「推し活」は、今やかなり一般的なものになりました。
2026年の本屋大賞を受賞した朝井リョウさんの小説「イン・ザ・メガチャーチ」も、まさにそんな「推し活」やファンダムの熱狂を扱った作品でした。
推すことで救われる人がいる一方で、その熱狂が利用されたり、いつの間にか自分をすり減らしたりする人もいて、読んでいると、推し活に励む側とそのムーブメントを意図的に引き起こすビジネスライクな面、どちらにも共感ができ、精神科医としてはどういう視点で読めばいいのか少し悩まされました。
では、推しがいることはそもそも本当にメンタルにいいのでしょうか。解説していきます。
このレターでは、メンタルヘルスの話に興味がある、自分や大切な人が心の問題で悩んでいる、そんな人たちがわかりやすく正しい知識を得ていってもらえるよう、精神科専門医、公認心理師の藤野がゆるくお届けしていきます。有料会員になるとなんと100本以上の過去記事も全て読み放題。ぜひ登録して読んでみてください。
この記事は、名古屋駅から徒歩5分の名駅ふじのメンタルクリニック院長・藤野智哉により書かれています。HPも見てみてね。

会ったことがなくてもそこに存在する「関係」
著名人が結婚し、そのニュースを聞き、崩れ落ちる人がいます。
側から見ていると、「別に自分が結婚できるわけでもないのに」「関係ないのに」と言いたくなってしまいますが、推していた本人にとっては当然大きな出来事です。
だって関係なくはないからです。
心理学の世界には「パラソーシャル・リレーションシップ(parasocial relationship)」という言葉があります。
これは芸能人やYouTuber、架空のキャラクターなど、相手はこちらのことを知らないのに、こちらは相手に親しみやつながりを感じている、そんな「一方向の人間関係」のことです。
別に結婚できるとかできないとかそういう相互的な「関係」の話ではなく、他者との間に自分が感じる「関係」です。
「人間関係」という言葉を使うと少し不思議ですが、考えてみれば、毎日のように動画を見て、考え方を知り、喜んだり落ち込んだりする姿を何年も見ていれば、実際に会ったことがなくても「この人のことを知っている」という感覚が生まれるのは、それほど奇妙なことではありません。
この記事は無料で続きを読めます
- その感覚はどれくらい役立つ?
- ファンダムの力
- 精神科医として見逃せない負の側面
- 推しは「人生の代わり」ではなく「人生に足すもの」
すでに登録された方はこちら